A様ご家族:ご夫婦
竣工:2016年5月
上空から見るとアルファベットの「K」の文字に見えるので、そう名付けられました。
その「K」のお宅に、新築をされた当時のお話をお伺いに行ってきました。
きっかけ
ずっと都会で暮らしておられた施主様ご夫妻が、「最後は、故郷に帰って」と30数年ぶりに舞鶴に帰ることを決められました。これが、新しい家を建てるきっかけでした。3人のお子様達はそれぞれ大学生と社会人。故郷に建てる家はご夫婦2人の言わば「終の棲家」。上質な時間を過ごすことのできる住まいを実現された物語です。
なぜ、伊藤孝先生(建築家)だったのですか?
2年半前、舞鶴赤れんがパークで開催された「未来をのぞく住宅展」にご夫婦で行かれたのが伊藤先生との出会いだったそうです。
坂根工務店は「アーキテクツ・スタジオ・ジャパン」の舞鶴スタジオとして建築家ネットワークに加入しています。建築家のご紹介、聞き取りや打ち合わせに参加し、概算見積りを作成、家づくりを施主様・建築家と共に実現していきます。
その出会いの場となるイベントが「未来をのぞく住宅展」です。
伊藤先生のお話を聞かれ「じゃあどんなプランを提案してくれるのか聞いてみよう」ということになったそうです。
すると、驚きのプランが提案され、「え~、こんな発想もあるんだ!」とびっくり。それで、「じゃあ、ここはこんな風にできますか?」、「あんなこともできますか?」と要望をぶつけていくと、伊藤先生はすべて「はい。わかりました」と受け止めてくれ、どんどんプランが進化していったそうです。自分達の要望が、伊藤先生の経験によって昇華され、出てくるプランがどんどん納得の内容になっていったと。「こちらの要望を前向きに聞いてくれるところが、とても良かった」と、奥様から。最終的に、自分達が納得できるプランになったので、「このプランで家を建てます」とサインをされたそうです。
具体的にどんな要望をされたのですか?
まず、大前提になる要望が2つあったそうです。
ひとつは、眺望とプライバシー。敷地の周辺には高層のホテルやマンションがあり、プライバシーが心配。プライバシーを守りながら、眺望を確保することが第一の前提。
もうひとつは、庭石と樹木の活用。敷地はご主人のご実家の土地。そこには、お祖父様が四国から取り寄せたという庭石と、古くからある紅葉や梅の木がある。それらを活かした設計にするのが第二の前提。
この2つの前提を満たすための設計が、「K」のカタチだったと。Kの文字の切れ込み部分が、プライバシーの確保と庭石・樹木の利用を両立させるデザインでした。加えて、その切れ込みが、陽の光りを部屋の中へうまく取り込んでくれました。
その他、詳細なご要望がいくつもあったそうです。
例えば、キッチンはTOYOキッチンの特定のモデルをご指定。奥様が以前のお家でも使っておられたお気に入りのモデル。同じくTOYOキッチンのベネツィアガラスのモザイクタイルを、内装のアクセントとして使うこと。キッチン、洗面所、トイレなど、たくさんの場所に使われています。
そして、室内の壁は手塗りの京土壁。上品な雰囲気を演出するためです。リビングに薪ストーブも。これは、ご主人のご要望。リビング横に和室も。ほっとする空間に。
家の中は、なるべく生活感を出さないように。そのため、冷蔵庫はわざわざキッチン横のパントリーの中へ持って行き、引き戸で隠れる配置に。奥様こだわりのキッチンの演出です。ご主人の趣味である天体観測が出来るベランダも。これは、車庫の2階をベランダ・スペースにして、2階から出入りが出来るように。車庫と同じ広さのベランダなので、たっぷりのスペースです。ベランダは、ご主人の天体観測以外にも、BBQや夏の花火観賞にも使う計画だったそうです(あまり使ってないけどね(笑)とは、奥様)。
特別な家
本当にたくさんの、しかもとても本格的なご要望だったので、「すごくお詳しいですね!」と質問してみました。すると奥様から、「こんな風に買った本に付箋を付けて、希望を伝えたんですよ」とたくさんの本を見せて下さいました。リビングやダイニングの雰囲気、キッチン、収納などとてもたくさんの本があり、本当にたくさんの付箋が付いています。「この本を見せて、こんな感じがいいですと伝えると、伊藤先生の事務所にも同じ本があるのか?と思えるほど、その事例を研究して希望を叶えて頂きましたよ」と。
たくさんのご要望をされた奥様のお話をお伺いしていると、このお家は「奥様の作品」といった印象を受けました。実際、奥様もたくさんの想い入れがあるのだろうと思います。そして、同時に納得感も。やっぱり、自分達の考えがカタチになった家は特別のようです。
住んでみていかがですか?と聞いてみました。
すごく満足されているご様子でした。
例えば、リビングから見える庭がとても素敵でした。庭石や紅葉がちょうどいい場所にあり、リビングからはとても味わい深い光景になっています。庭石や紅葉のことを説明してくださる奥様の表情がとても楽しそうで、「すごく満足されているんだなぁ~」と感じられます。
また、何と言っても、居心地の良さそうなリビングも奥様のお気に入りのようでした。シックで大人の雰囲気が漂うデザイン。柔らかい木の雰囲気。上質な時間が流れる空間でした。そこに、ご夫婦で並んで座れるソファーが、TVに向かって置かれています。ソファーの前にはお二人で使う小さなサイズのグラス・テーブルが。豊かな時間を過ごしておられるお二人が目に浮かびます。
それに、お料理がお得意の奥様は、キッチンもフル活用のようでした。「やっぱり、お料理には炎が見えないと」と、わざわざガス・コンロを選択されたキッチン。奥行きがあるタイプで、とても使いやすそうなキッチンです。
そして、間接照明に映えるキッチンがすごくいい。手塗りの京土壁に間接照明の灯りがあたると、手塗りの微妙な凹凸が光と影のコントラストを映し出し、なんとも味わい深い雰囲気になります。贅沢なしつらえです。
自分達の考えがカタチになると、やっぱり特別
取材をさせて頂いて最も印象的だったのは、楽しそうにお話をして下さる奥様の笑顔。
どんな家にしたいのか?をたくさん情報収集され、それを要望として建築家の先生にしっかり伝え、それがカタチとなった。これがとても納得であり、そこで暮らすことでとても充実した気持ちになる。そんな循環なのかな、と感じた取材でした。やっぱり、自分達の考えや要望がしっかりカタチになると、それは特別な家になるのですね。
A様の奥様、とても楽しいお話をありがとうございました。本当に、楽しかったです。